9月は台風がもっとも上陸する季節
理由は太平洋高気圧が弱まるから
高気圧が元気なうちは縁に沿って北上していく
前回に引き続き台風が迫るなかの山行となった
はじめは穂高を縦走する予定だったが
稜線歩きが長いことと、台風の影響が強いと思われたので剱に転戦することとなった
入山日はまだ台風は九州にいたが大型なので高山では少し影響がある
南の方は黒い雲があり富山湾のある北側は青空が広がっている
西に目をやると春山のように霞掛かった山並みが美しく幾重にも連なっていた
別山乗越から剱山荘へのトラバース道を歩く
ここは剱岳の眺めは別格だし途中のお花畑も素晴らしい
久しぶりに歩いたが魅力的なルートだった
チングルマは果穂となって時折吹き抜ける風になびいている
短い秋の盛りがすぐそこに迫っていた
夜が明けると昨日よりも風が確かに強まっている
朝焼けが天候の崩れを知らせていた
一服剱へ登ると富山湾が美しい弧を描いていた
今はまだ穏やかなように見える
「前剱の門」は高度感のあるトラバース
怖気づいて引き返す単独の女性がいたがそれもよい判断だろう
「平蔵の頭」を過ぎる頃、背後に気になっていた黒い雲が近づいてきて剱の山頂を隠してしまった
カッパを着るほどではないが霧雨が降る視界のない中、「タテバイ」を登る
登り切って風のよけられるところでゆっくりと休憩をとった
今日は頂上を往復するだけで時間にゆとりがある
台風が離れているときには断続的にちぎれた雨雲が通過することを私は知っている
しばらくすれば晴れるかもしれないと期待していた
山頂の祠が見え始めた頃、雲が切れ青空が見えだした
足元に影ができ始めた時、西のがけ下をのぞき込むと「ブロッケンの妖怪」が現れた
山頂にいる人々に「ブロッケン出てますよ~」と教えてあげたが、
山頂写真を撮ることに夢中でいまいち反応がない
山頂写真はいつでも取れるのに…と独り、思った
前回登った時に見られなかった景色を堪能できてお客さんも喜んでいた
ガスが晴れる前に下山した人たちも山頂からの展望はなかっただろう
ほんのひと時の違いで山の天気は変わる
渋滞を恐れてみな早出したのかもしれないが、その人たちで帰りの「ヨコバイ」も渋滞していた
「八ツ峰」が霧の中から現れる
剱から見る姿は「果たして歩く場所はあるのか?」と疑いたくなる険しさである
山頂で心ゆくまでのんびりして下山する
行きで長蛇の列ができていた「ヨコバイ」も誰もおらず快適に通過することができた
帰りも沢山休憩をとって写真を撮ったり景色を見たりして降りた
それでも昼過ぎには小屋に返ることができた
なんで皆、そんなに急いでたのだろう?
下山日は更に風が強まっていた
二羽のライチョウが私たちを見送ってくれた
私は確かに彼女の声を聴いた…
「 また来られ~ 」…と