錫杖岳本峰を目指す最も美しいと言われる中央稜からグラスリンネ、東尾根をたどるライン。
頑張れば一日でも抜けられるが敢えてテントを背負ってじっくりと楽しむこととした。
泊りなのでゆっくりめに出発する。
今日は気温が上がりそうだ。
以前に登った烏帽子岩前衛壁・1ルンゼの氷はやや脆弱なように見える。
目指す中央稜のP2・右岩壁左ルートには既に1パーティーが取り付いていた。
彼らのいる右側の氷のつながったラインを登る。
取り付きまでは北沢を渡らなければならないが昇温とともに壁からはがれた雪に誘発されたサイズ1~1.5の雪崩が頻発。
収まったスキをついて急いで沢を渡った。
1ピッチ目は氷がシャーベット化していて使えず草付きをランナウトしながら巻き気味に越える。
遠目よりも傾斜があった。
散弾銃を浴びるように上部からチリ雪崩・雪塊が降ってくる。
続くピッチは安定した氷から。
ベルグラ(薄氷)のハング越えが核心。
対岸の前衛フェースを登るクライマー。
あちらは日が当たって暖かそうだ。背後に西穂高岳が輝いている。(レンズが曇っているのは雪を浴び続けているため)
フォローは荷物が重い!
チムニーを抜けて中央稜・P2を越える。
P1を巻き終えると美しい雪稜が本峰フェースへとつづいていた。
隣には烏帽子岩が強烈な存在感で屹立している。
左のツララが垂れているのが正面ルンぜ、その右・下部に三角の雪壁があるのが直上ルンゼ。
グラスリンネは直上ルンゼから右へ分かれるように派生しているが岩の陰に隠れて見えない。
近くから見た直上ルンぜ。
ここが一番、氷結具合が良さそうだった。
グラスリンネはやや傾斜の緩い氷雪壁。
本日のテン場を整地するI田。
背後に烏帽子岩そして穂高の稜線。
翌朝は暗いなかライトをつけて出発。
雪は降っていたが風は弱かった。
東尾根に出るとナイフリッジや岩壁トラバースなど変化に富んでいていた。
冬の錫杖岳本峰は初登頂。
氷あり雪稜ありナイフリッジありと変化に満ちていて、内容の濃いクライミングだった。