にわかに発生した台風に惑わさされずに涸沢へと向かう。
シーズン真っただ中の上高地は閑散としていて、横尾までの道もすれ違う人はまばらだった。
空気が入れ替わったせいか途中、幻想的な風景に出合った

枝の間から差し込んだ光が川霧を照らす。そして、水面に反射した光は放射状に広がっている。
それはキラキラと輝いてゆっくりと回転していた。
写真では十分伝えることができないが、初めて見る光景だった。

山を歩いていると映画の1シーンのような光景に出合うことがある。

台風接近がうそのような青空が広がる。
涸沢に着く直前に降られはしたが、概ね快適に歩くことができた。


夜半は強い雨が降っていたが、風はほとんどなかった。
朝まで霧雨が残っていたので小屋で時間をつぶして遅めに出発する。
北穂東稜はガスに覆われてまるで宙に城塞が浮かんでいるようだった。

南稜を下山していると明日、歩く予定の北尾根が姿を現した。

翌朝は北尾根へ。
Ⅴ峰までは視界があったが徐々にガスに覆われ始める。

Ⅲ峰の核心を登っている最中に雨が降り出した。
北尾根の岩場は岩登りを少しでもかじっていれば至極容易だが、未経験者にはなかなかハードルが高いようだ。

濡れた岩に苦戦しつつ登っていくと霧が晴れ始めた。

山頂に着くと青空が広がった。
「これにて梅雨明け宣言!」

下山は重太郎新道を慎重に。
下るほどに上がっていく気温に夏の訪れを実感するのであった。




