静寂の山

いつもなら賑わいを見せているはずの八ヶ岳

駐車場に車は殆どなく新雪の上には貂の足跡があるだけだった

今シーズン最強の寒気、大荒れ予報、緊急事態宣言などが理由なんだろう

純粋に山を愉しみたい気持ちがありながら、歩いていると自然と今後のことに思いが及ぶ

社会情勢に対してどうあるべきか、山を取り巻く環境、人気のない景色、ガイドの役割とは…

山に行くこと自体は感染拡大とは無縁だろう(もちろん対策をきちんと施せば)

怪我をしたり、事故を起こせば医療や救助隊に負担をかけることになる

そもそも事故や遭難を起こさないためにガイドが存在するともいえる

あらゆる環境や危険に対して最善の処置を講じるのが仕事

豊富な経験をもとに…

考えることを放棄してすべてを取りやめ、大人しくしていること

それが本当の答えなのか?

すでに問題は一つではない

誰かの考えに依存していないか?

実際の問題はそんなことでは簡単に解決しない

どれだけ自分自身で考え抜いたのか?

すべてはバランスが大事なんだ

目の前にあるハザード(危険を生み出す環境)に対していかにリスク(損害が生じる可能性)を避けるか…

時には敗退も選択肢となる

氷が脆ければ何度もテスティングしてから荷重する

不意の墜落に備え支点は何時もより多く設置する

厳しい寒気には防寒対策と迅速な行動で…

最後の滝は崩壊の危険があるので登らないこととした

大荒れ予報でも実際は…

場所によっては…

情報はひとつの手掛かりに過ぎない

現実はその場にいないと分からないものだ

最近は情報は溢れているが、知識は減っていると言われている

危険や困難に対して常に対処していくのが登山の真骨頂だ

自ら考え、判断し、行動する(あるいはしない)

今、社会が抱えている問題の多くに対応する力を僕たち(登山者)は持っているはずだ

答えは一つではないし、何が正しいのか分からない

だからこそ、問題に対して真剣に向き合い、とことん考え、覚悟をもって行動する必要がある

「山登りの中に答えがある」

そう信じている