槍見温泉・登山口の駐車場は三連休の初日というのに一台の車もなかった。
度々、襲来する台風が連休に期待する人々を惑わせる。
槍穂の稜線は厚い雲に覆われていたが、標高の低い錫杖岳はいつもと変わらぬ顔で迎えてくれた。
我々は人気ルートの左方カンテを目指す。
錫杖沢出合より急登をこなして取付へ向かう。
南風が入ったせいか、極度に蒸し暑く汗を搾り取られた。
傾斜の緩いルンゼを登ると眼下に鮮やかな紅葉が広がっていた。
下部の核心は露出感のあるフェース。
ガバをつかめば一安心。
弱点をついた合理的なラインが続く。
チムニーからフェイスへと変化のあるクライミング。
岩も堅く快適。
核心の被ったチムニーはワイドに慣れていれば簡単。
でも荷物は降ろしておいた方がいい。
フェイスからスラブへと後半戦も飽きさせない。
下降はすっきりと懸垂下降。
岩の条件も最高で強風もなく終始快適なクライミングとなった。
危惧していた台風の影響もほとんどなく、一瞬雨粒が落ちてきたが再び回復して問題なし。
左方カンテは久しぶりの再訪となったがあらためて素晴らしいルートだと感じた。
翌日は「注文の多い料理店(5.9)」へ。
夜明前に雨が降ったが、回復予報なので期待して基部まで行ってみることした。
ガスは晴れず写真では分からないがビショビショ。
その代わりガスの切れ間に美しい紅葉を堪能。
結果的には1勝1敗となったが、またとない完全貸し切りの錫杖岳を楽しむことができた。
岩は取付きに行って触ってみないと分からない。