槍ヶ岳の北方に独特の存在感を見せる北鎌尾根
槍ヶ岳には東鎌尾根、西鎌尾根、穂高から続く南からの稜線それぞれに登山道がある
人気の山には多くの登山道があるのは頷けるが北側に整備された道はない
その理由は…
一般登山道を作るには難易度が高すぎるからである
北鎌尾根に取り付くには何通りかあるが
現在は槍沢から水俣乗越を越えて北鎌沢を詰める人が多いだろう
水俣乗越から急なガレ場を下る
踏み出す足元がどんどん崩れていく
年々その酷さは増しているように思う
ここでてこずるようでは北鎌尾根を登る資格はない
北鎌沢出合から北鎌沢右俣を詰める
沢は何度か枝分かれするが分かれる角度が浅いので
GPSアプリなどでは進行方向を判断するのは難しいだろう
地形を読んでいく必要がある
間違っても戻ることは困難だから進まざるを得ない場合も多い
風の抜けないこの沢はとにかく暑い
湿気も多く体力を奪われる
昨今、疲労での救助要請という登山者が多いようだが大半はこの暑さにやられたものであろう
今や北鎌尾根の核心はここだと言っても過言ではない
稜線に出ると裏銀座の山々、荒々しい硫黄尾根が目に飛び込んでくる
風も抜けるようになり開放感に包まれる
多くの岩峰が連なる稜線をルートファインディングしながら進む
ルートどりの選択肢は多くどれが正しい、間違っている、ということはなく自分の判断で進まなければならない
人のトレースをあてにしているものは窮地に追い込まれることもある
独標では風格のある槍ヶ岳を正面から望むことが出来る
ここから見る槍ヶ岳は威厳に満ちている
ここからはアップダウンを繰り返しながら進む
岩は風化して脆く時に足元から崩れていく
岩峰からの下りは先が見えないことが多く経験値から導き出される適格なルートどりが求められる
視界があればよいが、一度ガスに包まれたら困難度は各段に増す
エスケープルートはないと言っていいい
一つピークを越えるごとに大きくなる槍ヶ岳に励まされながら進んでいく
槍ヶ岳直下の岩場もルートファインディングが難しく
正しいルートから外れると一抱えもある浮石が積み重なる危険地帯となる
祠の裏側から山頂へ飛び出す
登り切った感動はひとしお
長く困難な北鎌尾根はやはり日本を代表するクラシックルートといえるだろう
下山をヒュッテ大槍の方からたどれば歩いてきた尾根の姿がはっきりと見ることが出来る
山の総合力を試されるコース
これからも多くの登山者の憧れの対象であり続けるだろう