詳細を誇る瑞牆クライミングガイド(クライミングルート図集)に記載されながら実地調査が行われず謎に包まれている神無月岩。
入門的なグレードに遠くない(と思われる)アプローチ。
マルチピッチルートが3本並ぶ岩場と言ったら普通は人気が出る。
その秘密を解明すべく夏のある日、山の仕事の合間を縫って訪ねてみたのであった。
瑞牆山荘からの登山道を登り、尾根へ登り上げると目の前に瑞牆山の岩峰群が姿を現す。
岩に包まれたその山容に多くの人が感嘆の声をあげることだろう。
私が学生の頃、訪れたときにはここは森に覆われ山の全貌を見ることはできなかったように思う。
おそらく展望の為に遮っていた木を刈り払ったのだろう。
誘惑の多い冨士見平山荘にテントを張ってから岩へ向かう。
登山道を離れ岩場を探すも、ごく簡単な(しかも合っているか分からない)アプローチ図を参考に森へ入る。
概念図なので距離感や所要時間は不明。
森へ入ると眺望が効かず、どこに岩があるのか分からない。
それらしき岩が無数にあるがどれもどこか違うようだ。
1時間半ほど森をさまよい歩き、それらしき岩の側へ行っては引き返す。
もちろん藪漕ぎのおまけつき。
激しいヤブを漕いで展望のよい岩峰へ登ると、驚くほど立派な岩壁が見えた!
傾斜の緩い壁には一切のボルトは見当たらない。
自ずと弱点を突いて登ることとなる。結果、水晶ルートをたどる。
カムでプロテクションをセットしながらロープを伸ばす。
ホールドはやや砂っぽいが問題になるほどではない。
それより焼け付く日差しに岩も熱く体力も削られる。
グレードは易しいが墜落の許されないランナウトもある。
ここでは登る能力よりも、落ちない能力が試される。
核心は5.8のグレードだが、体感はもっと上。リーチとパワフルが必要!?
その後のスラブもピリッとしている(ここには1本だけリングボルトがあった)。
岩のてっぺんは見晴らしがいい!
岩稜はさらに続いている。
更に上を目指したい気持ちを抑えつつ、結構いい時間になったので、立木を利用して取付きへ戻る。
弱点を突きながらワイルドな壁を登る。きっと初登者もワクワクしながらこの壁を登ったのだろう。
グレードギリギリの人にはお勧めしないけど、冒険的クライミングが好きな人には是非登って欲しいルートだ。
行ってみたい方のためにアプローチをお教えしよう。
※「岩探しもクライミングのうち!」という方はこれより先は読まないように!
〈 神無月岩アプローチ 〉
① 冨士見平小屋から瑞牆山本峰へ向かう途中の桃太郎岩から天鳥川下流へ向けて踏み跡を入る。
② 3分ほど下流側へ進むと20mほどの大岩が現れ、その先にスラブがある。
③ スラブの左端にそって5分ほど斜面を登る。
④ やや明瞭な踏み跡が横切るのでそれに沿って20mほどトラバースすると尾根上に大岩がある。
⑤ 大岩の尾根にそって5分ほど登ると岩壁に出る。
⑥ 岩壁に沿って左へヤブを漕ぎつつトラバースすること5~10分で取り付きへ。
※もし分からない場合は桃太郎岩から天鳥側下流に10分ほど進むと水のない深い谷に出るので、谷へと降り立ち、その谷を詰め挙げていくと神無月岩へとぶつかる。
(これが一番確実にたどり着く方法)