宝剣岳西面・F沢敗退~滑川中央稜

標高の高い千畳敷はこの時期、雪や氷を待ちきれない多くの登山者を迎えている

たどり着いたカールの底は一面の銀世界ではなく塩大福のようなまだら模様だった

登山者もまばら

快晴の夜明け

この冬一番の冷え込みがようやく訪れた

南アルプスの背後から朝の光が昇り姿を露わにしたナナカマドについた雨氷を輝かせた

伊那谷は雲海に沈み未だ眠りについている

乗越浄土を越えて木曽側へとガレ場を下る

 

目当てのF沢は音を立てて水が流れていた

今朝の冷え込みだけでは氷を成長させるには物足りなかったらしい

このまま引き上げる訳にはいかないので下降中に目をつけていた右岸の岩稜にとりつくこととした

…が、スラブにうっすらと乗ったベルグラは薄くアックスを受け付けない

ラインを変更して岩稜をたどる

凍える谷底から光あふれる尾根へ

尾根末端の岩稜帯を抜けると傾斜が落ちる

雪が少ないためハイマツがまだ埋まり切っていない

強点を突いて登っていくと再び岩稜帯が現れた

節理の発達した宝剣岳の岩場は絶好のアルパインクライミングの場である

何が現れるか分からない冒険的な楽しみが味わえる

何よりもロケーションが素晴らしい!

シャモニーのコスミックリッジを彷彿とさせる巨大なピナクルが並んでいた

背後には均整のとれた三ノ沢岳

傾斜の強い岩峰が立ちはだかる

裏側はどうなっているのか?

裏側には何とも魅力的なラインが隠れていた!

快適なミックスクライミングを楽しめた!

駒ケ岳を背に這い上がると主稜線はすぐそばだった

僅かな距離に宝剣山荘の屋根が見えていた

帰ってから調べてみるとどうやら滑川中央稜というらしい

思いがけず見出したラインは秘められた宝物のような輝きを放っていた

決して難易度の高いクライミングではなかったが、冬ならではの自由なラインを登ることでクライミング本来の楽しさを存分に味わうことができた!!

これぞ冬季クライミング!!