明星山は正しくは「みょうじょうさん」だがクライマーの間では「みょうじ」と呼びならわされている。
周囲を高峰に囲まれて隠れた位置にあるために一般的には知られていないが、その姿を一目見たら心に残る山である。
観光地として知られるヒスイ峡から見上げる南壁の威容はすさまじい迫力に満ちている。
かくいう私も初めて訪れた十数年前は圧倒的な岩壁に押しつぶされそうな思いだった。
それが初めての本チャンアルパインであったから尚更かも知れない。
〈ヒスイ峡から見上げた南壁〉
我々が向かう西壁は明星山山頂へと続く登山道をアプローチする。
小滝川に架かるつり橋を渡り山へ入る。
すっきりとした青空広がり快適なクライミング日和が期待できそうだ。
小滝川は先日の台風21号の影響で濁流となっていた。
しばらく南壁に取りつくことはできないだろう。
歩きやすい登山道を進むと西壁が突如として現れる。
思ったよりもすっきりとした部分が多いように思われる。
1ピッチ目(5.9)は極めてシャープなエッジを持ったホールドが続く。
時折ぶつかるハングを縫うように登っていく。
案外、ホールドの向きが悪く身体も心も温まっていないので登りづらく感じてしまう。
2ピッチ目(5.10C)はライン取りが核心。
行く先のホールドが見こせないので探り探りのクライミングとなる。
見たことない錆びたボルトもより一層緊張感を高めてくれる。
登り切ってみるとグレード相応の良い内容だった。
紅葉は見ごろを迎え、北アルプスの稜線は白く輝いていた。
3~4ピッチ(5.10A)をつなげて登る。
右手には「風ルート」の非常に美しいフェースが見えている。
被った凹角を登るが今にも剥がれそうなホールドでレイバック気味に登らねばならない。
そして時々本当に剥がれる。
5ピッチ目(5.8)は被り気味のクラックをたどるが、こちらはカムが良く効いてくれて安心。
5ピッチ目終了点。
本来はここで引き返すようだが、支点も嫌な感じだし、先をみると岩も何となく続いているのでロープを伸ばしてみる。
結果。ところどころ快適な岩もあるが、藪がうるさく浮石も大分溜まっている。
グレード感は強点をついて5.8。
みんなが登ればましになると思うのでなるべく上まで行きましょう。
傾斜が緩んできた適当なところから立木を使って「春の息吹」ルート側へ懸垂する。
途中のビレイ点はRCCボルトが折れ曲がっているものが散見されたので、こちら側のルートは再整備が必要だろう。
素晴らしいスケールの美しいスラブ・フェース。
支点が整備されれば三ツ星のルートになるだろう。
気持ちの悪い支点で気持ちの良い懸垂下降。
明星山・西壁は高難度ルートも沢山引けそうだしかなりの可能性を秘めている素晴らしい壁でした。