明け方近くまで大雨と強風をもたらした台風は過ぎ去り、明るい太陽が白い花崗岩をまぶしく照らしている。
いつもは順番待ちのセレクションは今日はどうやら貸し切りのようだ。
手始めのクラックは「くの字」に折れ曲がっていて、慣れない身体に不規則な態勢を強いる。
短いながらも手ごたえがあって、この先のピッチに不安を感じる者も多いだろう。
続くピッチのスラブは花崗岩の洗礼を十分に浴びさせてくれる。
一見するとホールドは皆無だが、わずかなくぼみや突起を見つけて立ちこんで行かなくてはならない。
高鳴る鼓動を必死に抑えながら身体を持ち上げていく。とにかくシューズを信じること。
チムニーからクラック、そしてフェイスへ。ピッチが進むにつれ高度感も増していく。
人工壁では味わえないトリッキーなムーブ。とにかく前へ進むのだ。
こちらは余裕あり。ムーブは人それぞれ。
最後の難関のワイドクラックは慣れないものには苦行となりえる。
苦難の先には歓喜あり。念願が叶いました!