誰をも魅了する景色というものがある。
それが誰でも見られるわけではない場所にあればなおさらだ。
室堂に降り立つと既に紅葉の盛りを迎えていた。
秋の澄み渡ったそらが気分も爽やかにしてくれる。
ふいに現れた環水平アークは瑞兆かそれとも悪天の兆しか?
接近する台風の影響もあるかもしれない。
台風18号は日本海を東進していて数日後の予報は悪い。
ただこれまでの経験上、山が南風をブロックしてくれてそれほど荒れることはない。
予報はあくまで予報で台風の場合、ことさらに悪目に出すことが多いことも留意する必要がある。
予報を信じ切って裏切られたり、勿体ない思いをすることは数えきれないほどある。
余裕を持った行程や柔軟な計画変更を盛り込みながら自分の判断を信じて行動することが大事。
こんな登山日和を逃す手はない。
山も小屋も空いていて快適そのもの。
剱沢小屋を後にして朝焼けに染まる剱の懐へと飛び込んでいく。
この日は無風快晴で日差しが強く、仙人峠へと向かう急登では汗を絞られた。
秋だというのに三ノ窓雪渓には豊富な雪が残る。
朱く色付いたナナカマドと鋭い岩稜を並べるチンネと八峰の稜線。
小屋は傾いているがおもてなしは素晴らしい。
富山の山小屋はどこも温かく登山者を迎えてくれる。
いつ訪れても心を動かされる風景がここにある。
時間とともに移り行く空の色を眺めて飽きることがない。
早めに小屋についてゆったりする贅沢なひととき。
待望の絶景を見ることができて満足。
静かな朝。
淡く朝焼けに染まった稜線。
ワイルドな登山道をたどり仙人温泉の源泉へ。
熱いお湯が噴き出ている。
長い雲切新道を下って人見平の関電施設を通過する。
大自然とそれを利用する人間の戦いがここにある。
阿曽原温泉で至福の時を過ごし、欅平へと続く水平歩道を歩く。
堅い岩盤をえぐり取った道が続く。
一歩間違えば谷底へ。
体力と技術には余裕をもって臨みたいものだ。
大太鼓の難所は高度感抜群。
「歩きスマホは禁止です!」
欅平に近づいたころパラパラと雨が降ってきたが雨具を着るほどではなかった。
結局、出発前の予報はまるで当たらず、私の予想はバッチリ的中!!
風景、山小屋、温泉、どれもとっても一級の日本を代表するトレイルを素晴らしい晴天の下歩くことができた。