天使の気まぐれ 西穂~奥穂 そして地震…

台風14号は進路を南寄りに変えひとまず北アルプスへの影響は最小限となった

西穂高ロープウェイも運行に支障なし、小雨の中であったが無事、西穂山荘へ入ることができた

明日は台風一過の晴天が約束されている

期待に胸を膨らませながら眠りにつく

谷間に残る雲は焼岳への稜線をなめるように流れ落ちていく

乗鞍岳の背後の雲がほのかに色づいて朝日の訪れを予感させる

上高地や岳沢は未だ雲海の下に眠っている

明神岳の稜線がそれを突き破るように連なっていた

茜色の幕がゆっくりと降りて笠ヶ岳にかかろうとしている

辺りには風の音だけがかすかに響いていた

 

雲を破って太陽の光が溢れだす

山の一日が始まる

独標を過ぎると道は険しさを増す

足のすくむような痩せた稜線を慎重に進む

ルートは複雑に入り組んでいてルートファインディングが鍵となる

目指す奥穂高岳の山頂まではいくつものピークを越えていかなければならない

なんども挑戦したが天候に阻まれた稜線

感慨もひとしお

天狗岳の逆層スラブはしっかりとした鎖がついている

越えてきた間ノ岳を振り返る

見た目には歩けそうな場所はない

ついに会えたジャンダルムの天使

槍ヶ岳をひとかじり…

馬の背のナイフリッジを越えれば山頂は近い

ジャンダルムを背後に快適なクライミング

足を延ばして涸沢に泊まる

さすがに3連休はたくさんのテントがカールを彩っていた

夕食を食べ終え、食後のお茶を飲んでいると…

激しい縦揺れが…!!

そして崩落…

地震による崩落が続いてカールが砂煙に包まれた

カールの底のテントの人々はかなり動揺していた

その後も余震が続いた

小宇宙のように輝くテントの灯り

眠れぬ夜を過ごしたことだろう

山は生きている…

そして僕らは山に登らせてもらってる

落ち着いたらまた登りに来ればいい

ただそれだけ…