瑞牆山の不動沢には黒く深い森の中に巨大な城壁を思わせる岩壁が連なり、そこを歩く登山者の眼を釘付けにする。

当然、岩を嗜好するものにとって格好の遊び場であるが、そこにはやや他とは異なる文化が根付いている。

その一つにミニマムボルトという精神がある。

ミニマムボルトとはその名の通り岩に打ち込むボルト(支点)を最小限にするというものだ。

フリークライミングとはそもそもありのままの岩を極力、道具に頼らずに登るスタイルを指す。

岩に打ち込まれたボルトは安全に上るための最大限の妥協点といえる。

不動沢ではミニマムボルトの精神が息づく代表的なエリアだ。

分かり易く言うと1ピッチ40mのルートにボルトが一本しかなかったりする。

引き換えにクライマーは自然の弱点であるクラックやポケットを探し、自らプロテクション(支点)をつくっていかなければならない。

いわば岩とクライマーの真っ向勝負である。

そこにはグレードでは計り知れない岩との駆け引き、自分自身との対話がある。

時には命の危険さえ…。

それを乗り越えた末のクライミングには何事にも代えがたいものがある。