今日は季節外れの雪。
こんな日はゆっくりと本を読むのに適している。
世間は何やら騒がしいが静かな物語の世界に浸っているのもよいだろう。
私が一押しでお勧めする本はこちら。
北杜夫の「白きたおやかな峰」。
内容はカラコルムの未踏峰ディランへの遠征記。
山に詳しくない人でも分かり易い文章で高峰登山のやり方や難しさについて丁寧に書かれている。
特に素晴らしいのは臨場感ある山の描写。
カラコルムの山の表現ひとつをとっても素晴らしい。
「ここは不思議な世界であった。地球の古い古い荒々しくも華やかな地肌の隆起。厖大な雪と岩が、なにか人を魅し、圧倒し、厳粛にさせるものを形造っていた。」
独特のユーモアを交えた文体で物語は進んでいく。
「山男のピュアにして生臭い初登頂への情熱、現地人との摩擦と交情…。そして彼方に鎮座する純白の三角錐とは一体何者なのか?」
今日のような雪の日には遥か遠くの頂きに思いを馳せるのも一興だろう。